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息を吐くように笑って輪に入った。みんなで他愛のない話をしていた。
昨日のテレビの話が始まり、あたしは笑みだけを浮かべて入りこまない距離を適切に保った。昨晩のバラエティ番組はそうとう面白かったようだ。みんなお腹を抱えて笑っている。あたしもみんなに遅れてみんなの姿勢を真似て、からっと笑った。それでもあたしは楽しい。
ふと、背中に衝撃を受けた。誰かのランドセルがあたった。振り返ると晴生がけたけたと笑っていた。
「バトンタッチ。だんご係、俺今日までだからな。二学期は清水な」
ああ、そうか。とんと忘れていた。教室の真ん中に視線を向けた。指をしきりにいじっている竹内安吾が見えた。みんなもあたしも「だんご」と呼んでいる。
だんごはしゃべられない。ずんぐりした体形で首をいつも傾げ、「あー」とか「うー」と発するだけだ。二学期のお世話係はあたしに決まった。夏休みも嫌なのに夏休みが明けてからも同じことをするのか。思わずため息が出た。
「知沙、はあぁって言った。二学期だんご係だもんね。かあいそうに」
ナナが悪ぶれもせずそう言った。みんなもテレビの話題でほころんでいた顔の眉を下げ、あたしに同情する顔を送った。うん、と言った。そういうため息ではなかったのだけれど、うんと言って閉じ込めた。
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