1 竹内安吾

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 給食の列に並ぶと給食当番がおかずを入れてくれます。スープも入れてくれます。みんな給食当番に「人参いらない」とか「お肉もう一個」などお願いしています。給食当番のみんなはめんどくさそうです。  ぼくがトレイを差し出すと、ミートボールが一個だけころりと食器に入りました。 「あーー」  給食当番の酒井さんがぼくを見ました。 「だんご、ちゃんと一個にしたよ」 「うーーー、うあぁ」  酒井さんは次のともだちにミートボールを三個入れました。    ぼくは低学年のころ、給食を食べられませんでした。みんなそれを知っています。  ぼくはだんだん身体が大きくなりました。お腹が減るようになりました。とっくに給食は食べられるようになりましたが、それをみんなはよく知りません。「もう一個ほしいです」と言いたいけど、ぼくの声は伝わりません。  みんなでいただきますをして、先生がおしゃべりをして、ごちそうさまでしたと手を合わせたら給食は終わります。ぼくはすぐに食べ終えてしまっていました。 「だんご。よく食べたじゃん。俺、ドッジボールしてくるから本読んでてな。カメカメ見ててもいいぞ」  お世話係の晴生(はるき)くんです。一学期のぼくのお世話係は晴生くんでした。一学期は今週までなので晴生くんのお世話係は今週で終わりです。 「あーーー」  ぼくは足りなかったけどおいしかったと言いました。 「そっかそっか。カメカメ見てるか。じゃあなー」  晴生くんは校庭に駆けていきました。クラスのみんなも駆けていきました。
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