1 竹内安吾

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 二問目の解答がはみ出してしまいました。安永さんの椅子の下を見ました。消しゴムがひょこんと座っています。でも、間違っているわけではないので消しゴムをとるのを我慢しました。  四問目は完全に間違いました。消しゴムが必要です。ぼくは安永さんの椅子の下をもう一回見ました。安永さんが後ろを向きました。安永さんはぼくの目線に気づいて訝しい目をぼくに向けました。  ぼくはすべての問題を解きました。四問目と五問目と七問目を間違えました。やっぱり消さないといけません。ぼくは安永さんを見ました。安永さんとまた目が合いました。 「せんせえ、だんごがあたしのカンニングするぅ」  安永さんが手を挙げて言いました。 「あうう」  隣の晴生くんがぼくの目を見ました。晴生くんはぼくの目線が安永さんの椅子の下に向いたのを気づいてくれました。 「すごいジロジロ見てくるぅ」  頬をふくらませてぼくをにらむ安永さんの椅子を晴生くんがつかみました。  椅子を引っ張られて安永さんは後ろに倒れそうになり、きゃっと声を出しました。そのままにらんだ目を真後ろに座る晴生くんへ向けました。 「ちょっと何すん……」 「下」 「はぁ?」 「ナナの下にだんごの消しゴム落ちてんの。だんごはそんなことしねえんだよ」
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