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だんごは困った顔をして何かを探し始めた。やがて桜の木の下に落ちていた枝を見つけてあたしの服を軽く引っ張った。ウサギ小屋の前でだんごは土に文字を書き出した。だんごの字は黒板に大きく書いてもだんご独自のもので読みにくい。ことさら土に枝で書かれると理解してあげられるかどうか。
だんごはあたしの目を見ながら一つの線を書くごとに確認をしてきた。一文字目は明らかに「し」だったが、その後が読めない。
「……し。だんご、その後が読めないよ」
キーンコーンカーンコーーン。
だんごの書く文字に夢中になったあたしはすっかり時間を見失っていた。寝不足は判断を狂わせる。やってしまった。
「だんご、ごめん。急ご」
あたしはだんごの手をとって校舎を目指した。チャイムが終わろうとしている。あたしがお世話係なのにだんごを遅刻させてしまう。汗で滲んだあたしの手をだんごが強く握った。振り向いたらだんごが頷いた。だんごが書きたかった文字が分かった気がして、でもそんなはずはない気がして、あたしは夢中でだんごの手を引き階段を上った。
夜。お父さんがまだ帰らない夜。お母さんのおむつを替えてお水を飲ませたいつもの夜。
あたしは花柄の保冷エコバッグを肩にかけて玄関扉のノブに手をかけた。
「行ってきます」
返事なんてない。かちゃりとサムターンを回すと背中からお母さんの声が聞こえた気がした。振り向いたが閉じられた襖しか見えなかった。
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