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「もう、僕の腕なら君と洋子と、3人で暮らしていけるよ。なんなら、玉造の姓を捨ててもいい。ま、それはまた今度話そう。景子……、会いたかった」
「坊ちゃま、私も」
「だから、名前」
「……洋平様」
「洋平でいいよ」
そう言った途端に降りて来たキスは、甘くて痺れて……私は蕩けるように彼の腕の中に堕ちた。
最中に放つ声は全て甘かった。終わった後、すぐに起き上がれない私を洋平様は、優しく拭いてくれた。
「景子、一緒に暮らそう」
「洋平さま……」
幸せな夢に包まれるように、私は身体を横たえた。
その日私の家に泊まった彼を翌朝見た洋子に、新しい言葉を教える。
「洋子、パパだよ」
「パ……パ?」
「そう、パパだよ。洋子、これから一緒に暮らそう」
私とは違う大きな手に抱かれた洋子は、一瞬キョトンとした顔をしたけれど、高いところへ持ち上げられると嬉しそうに声を弾ませた。
「パパ、パパ!」
「ははっ、洋子、会いに来るのが遅くなってゴメンよ」
二人のそっくりな顔を見て、やっぱりあの壁に挟まれた時の相手は彼だったと、私はようやく確信が持てた。
(おわり)
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