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坊ちゃんは私が部屋に戻ると、今度は正座をして私の方を向いた。
「その、責めるようなこと言ってごめん。あの後、解雇をしたのも、慰謝料を渡したのも父の仕業だった」
「やっぱり、そうだったんですね」
「僕は……、景子。君と結婚するために頑張って来た。コンクールで結果を残して、帰国したら君はもう玉造の家にいないし、本当に焦ったけど、許して欲しい……!」
「坊ちゃま」
「興信所を使って調べたよ。君と、子どもの洋子のことも。一人で、頑張ってきたんだね。僕たちの愛の結晶を産んでくれて、ありがとう」
「……坊ちゃま!」
「景子、君を今でも愛している。僕と結婚して欲しい」
予想もしないその言葉に、思わず涙が溢れてくる。この三年間、お互いに離れていた期間、坊ちゃまも私を想っていてくれた。その言葉が嬉しい。
「坊ちゃま! ……いいのですか?」
「その、坊ちゃまはさすがに止めて欲しいな。これでも立派な大人になったと思うけど」
「そ、そうですね。でも、なんてお呼びすれば……」
「旦那様でいいよ」
「へ?」
「結婚して、旦那様って呼んでくれればいい。あぁ、パパでもいっか。洋子もいることだし」
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