腹黒ピアニストは年上メイドを溺愛する

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 私が目を瞬かせて驚いていると、坊ちゃまは胸のポケットから小さな箱を取り出した。 「はい、結婚指輪」 「へ?」  箱の中にはペアになっている指輪があった。その小さいほうの指輪を取り出すと、坊ちゃまは私の手をとって左手の薬指にはめた。少しぶかぶかしていて大きい。 「サイズは直して貰おう。景子も僕にはめてくれる?」 「はい」  大きい方の指輪をとって、坊ちゃまの長い指にはめる。節で一度止まるけれど、それを坊ちゃまの右手が支えてくれた。 「この大きい手で、ピアノを弾くのですね……」 「今から、この手で君を愛したいけど……いい?」 「え? そ、それって……」 「その、初めての時はゴメン。理性が飛んでしまって、とんでもない恰好になってしまって。今から、それを上書きしたいけど……ダメかな?」 「ダ……、ダメじゃないです」  そう伝えると、坊ちゃまは景子、と私の名前をまたあの低い声で呼んで引き寄せた。 「でも、私なんかでよろしいのですか? 玉造のお家は……」
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