腹黒ピアニストは年上メイドを溺愛する

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 そんな我儘が父から許されると思わなかった。だが、許された。それは僕が高校を卒業し、ピアニストとしてフランスへ留学する予定があったからだ。やっと十八歳となった僕は、秋からの留学に備え、ひたすらピアノに専念している。  本人は多分気がついていないが、景子は僕のお目付け役だ。そんな人間が傍にいるのもうっとおしい、僕は我儘をたくさん言った。嘘もついた。軽い冗談で僕は自分のことを十四歳だと言えば、素直にそれを信じている。今はそれを逆手にとって、なるべく男と意識させないで甘えることにした。  景子は僕が子どもだから、甘えているだけだと思っている。そんなおバカな景子が愛らしい。常に音楽理論の難しいことを考えがちな僕にとって、今やおバカな彼女は癒しでしかない。 「景子、今度の休みに海へ行くぞ」 「へっ? 海ですか? でも私、水着を持っていません」 「あぁ、水着なら僕が用意するから心配するな」
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