文字の中のアリーチェ

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 では、何故便利なインターネットの情報を活用せず、わざわざ図書館などで本を借りてくる手間をかけるようになったのか。 ――それに。  今日の記事は、殊更顕著である。明らかに、同じ言葉が頻出するのだ。不自然なほどに。 『メリッサは、暴力的なほどの情熱で主人公に付き従うことを選びました。』 『まさに、彼は暴力を好まない、平和主義な主人公だと言えるでしょう。』 『暴力によって世界を支配しようとするガイトンに、真向から刃向う姿勢を取ったのです。』 『暴力を助長するような考えを良しとせず、話し合いを促したのです。』  暴力。  その言葉が、やけに頻繁に出て来るのだ。そういえば今まで見た記事でも、似たような単語が随分増えたなと感じた記憶がある。まるで、それをどうしても訴えたいとでも言うかのように。 ――え、もしかしてこれ、本当にそういうことじゃないよね?  証拠などない、推論のようなものだ。それでも気づいた途端、私の背中を冷たいものが走ったのだった。  ひょっとしたらMINAKOは半月ほど前から、誰かに家での仕事(求人に応募してきた時に、家で仕事をやっていると語っていたのは知っている)を監視される状況にあるのではないだろうか。図書館で、頼んだ本を借りてくることはできる。だが、インターネットを自由に閲覧することができないのではないか。  家の中でそこまで制限がかかっているとなると、仕事はさせるものの実質監禁状態である可能性も出てきそうだ。しかも暴力、をここまでアピールしてきているのなら――家庭内暴力、ということもあるのでは。 ――い、いや。これだけじゃまだ推測でしかない。ちょっと拘りがあって、暴力って単語が頻出してるだけかも。ハードなバトルものファンタジーの漫画だし、内容として不自然なわけではないし……。  他にまだ、無いだろうか。私は眼を皿のようにして文章を探った。すると、今回もここ最近によくあるように、数字が半角と全角で入り混じっていることに気づく。それから、少々回りくどい言い回しや不自然な言い回しがあることも。  ひょっとして、これも何か意図があったりするのでは。 ――……暗号?  直感に近いものがあった。もし、この中に暗号があるとしたら、それは彼女の記事をチェックする担当者、私にあてたものと見て間違いない。
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