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もうすぐ夫の聡介の誕生日。
その朝、私は朝食のハムエッグを食べながら、それとなく彼に希望を聞いてみた。
「ねえ、聡介。もうすぐ誕生日でしょ。なにが欲しい?」
「なんでもいいよ。特に希望はないし」
すでに食事を終えた聡介は、スマホを操作しながら、淡々といった。
「そんな。なにかリクエストいってよ。そうじゃないと、なにを贈ればいいか困るから」
「ほんとうになんでも構わないって……」
「そんなこといわないで」
「じゃあ君にしかできない贈り物をしてくれよ」
やっとスマホから目を離し、チラッと私のほうを見る彼。
「私にしかできない贈り物?」
「ああ。それでいいだろ?」
そういって聡介は再びスマホに目を戻した。まるで会話をするのが面倒だといっているような態度だった。
まあ、夫婦仲も少し冷め始めているから、こちらも気にもしないけど。
それにしても私にしかできない贈り物とは……? それって一体なんだろう?
考えているうちに、聡介は仕事に行くため、さっさと家を出て行ってしまった。
私たち夫婦には、まだ子供はいない。結婚して七年目になるのだけど。
主婦の私は、一日の大半をこの家で過ごす。
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