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トラウマ
梨花が向日葵に戻ると、ハルが
「梨花、どうしたの? 縁日、行かなかったの?」
「やっぱりダメだった」
「翔太は? 一緒じゃなかったの?」
「麗ちゃんと先に行ってもらった・・・」
「そうか・・・だめだったのね。浴衣脱いで楽にしなさい」
梨花が2階に上がっていくと、直ぐに、翔太が息を切らして入って来た。
「ハルさん、梨花は帰ってますか?」
「翔太・・・今帰ってきて2階にいる」
「すみませんでした。俺が、ちゃんと見てあげられなかった。鼻緒を直すからって言ってたから・・・まさか、気分が悪かったなんて・・・」
「そうかぁ・・・翔太がいれば大丈夫だと思ったんだけど・・・やっぱり、先に話しておけばよかったわね」
そう言って、おもむろに梨花のトラウマを話しだした。
梨花が4才の夏、父親と初めて八幡さまの縁日に行ったときのこと。
縁日の夜、梨花は大きな向日葵模様の浴衣に、黄色の三尺帯を結んでもらい、藍しじら織の浴衣を着た父親の腕にぶら下がりながら、ビョンビョン跳ねて楽しそうに歩いていた。
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