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真実
梨花の結婚という現実を目の前に見てしまったと、勘違いした翔太は、失意のどん底で毎日を過していた。
特に女性とは距離をおいて、心を開かなくなっていた。
社会人になって3年目。
プログラマーとして、パソコンとにらめっこしている日がほとんどだが、時々開発したシステムのテストのためにクライアントへ出張する日があった。
出張から帰って来た日、会社で一息ついていたところに、同期で総務の加藤が書類を持ってやって来た。
「今回は長かったな? でもまた明日から大阪とはお気の毒さま!」
「全くこき使われているよ! 今日だって、まだチェックで残業だよ。給料上げろって総務から言ってくれない?」
笑って愚痴をこぼした。
加藤は疲れ切った翔太を気遣って
「たまには、息抜きで合コンでも行かないか? お前、付き合い悪いよな」
「合コン? 興味ねぇ!」
「お前どんな子がタイプ? 俺、先月大学の友達の結婚式に行ってきたんだけど、会いたいと思ってた面白い子に会ったよ。見て!」
と、結婚式で撮ったスマホの画面を開いた。
「ほら? この子カッコいいんだ。同じ空手同好会でさ、たまにしか同好会へは来なかったけど、大会に出るとさらっと優勝さらっちゃうんだよ。女なのに、男気があるっていうか、さっぱりした子で、気遣いが出来るいい子なんだよな。でも、笑っちゃうんだけど、付き合ってた先輩を、ラブホの前で足蹴りしたって伝説があるんだよ」
「へぇ? ラブホで足蹴り? 面白そうな子だな?」
翔太は梨花みたいな子がいるもんだと、加藤のスマホを覗いた瞬間、椅子から転げ落ちた。
スマホを加藤から奪い取り
「梨花? 梨花!」
「あれ? 知り合い? そう! 安西梨花っていうんだけど」
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