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返答に詰まる暁龍に代わり、楊香は淀み無く話を進める。
「そうみたいですね。J……ジャックも時折、間違えるくらいですから」
全くのでまかせであるが、この時ばかりは暁龍は口達者な楊香に感謝した。
どこか寂しげな微笑を浮かべる未亡人に、暁龍はようやく本題に話を戻す。
「……大変申し訳無いのですが、ご令嬢の御部屋を見せていただくことは可能ですか? 」
「わかりました。こちらです」
ややふらつく足取りの未亡人に導かれ、二人は二階の一室に招き入れられた。
終わったら声をかけてください、との言葉を残して未亡人が出ていくと、改めて二人は室内を見回した。
モノトーンでまとめられた室内にある物と言えば、デスクにベッドくらいで、おおよそ年頃の女性が好みそうな物は存在しない。
ちなみに下宿先の家賃は、いつアリスが戻っても良いように家賃を払い続けているとのことだ。
すべての情報が消去されたと言う端末も、この部屋には見当たらない。
「どうやら、後日下宿先にも足を運ぶ必要がありそうだな」
そうつぶやきながら、暁龍は窓から外の様子をうかがう。
見えるのは件の白い花畑である。
その時だった。
「大尉、さっきのお茶、飲んだ?」
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