──Ⅰ──

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 昨今複数のアジトから発見された被害者たちはもれなく『洗脳』されており、彼らのケアがルナでは大きな社会問題になっている。  さすがにキャスリンも事の重大さに気がついたようだ。  公用の端末を手元に引き寄せると、彼女は軽やかにキーを叩く。 「今、発見された被害者リストを照会してる。でも、アリスに該当するような女性は見当たらないけれど」  言いながらキャスリンは改めてジャックに向き直る。  そして、本当にI.ᗷ.に入ったの? と疑問を投げかけた。 ──それで、君に聞きたいんだ。……その、サードの処置を強要された時、それらしい人はいなかったかな? ──  かつてキャスリンは惑連を離れていたとき、稼働不能に陥りかけたサード……No.3の処置をするようI.ᗷ.から依頼を受けたことがあった。  その折構成員と接触があったのなら、何らかの手がかりがあるのではないか、というわけだ。  確かにこれは聞きにくい質問だ。  そしてキャスリンは思わず苦笑を浮かべた。  何故なら、彼女の知るアリシア……アリスは、生前のエドワードから見せてもらった画像、すなわち目も開いていない赤ん坊だったのだから。
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