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何故こういうことになるんだ。
暁龍は内心独りごちた。
目の前には一面に、真っ白な花が咲き乱れている。
その見事な花畑の中に、小さな家がぽつんと建っていた。
キャスリンの元を辞去するやいなや、暁龍は楊香に問答無用で車に乗せられた。
そして、ナビの誘導に従いルナ市街地を離れた郊外のここカンドラマ地区にやってきたのである。
惑連のデータによると、ショーン未亡人は実家のあるこの地域に居住しているということだ。
「住所はここで間違いない。でも、それにしても……」
見渡す限りの白い花である。
一体どんな意味があるのだろうか。
首をかしげる暁龍をよそに、楊香はシートベルトを外すと車を降りる。
そして暁龍が止めるのも聞かず、件の家に向かい歩き出した。
「ったく……」
ぼやきながらも暁龍は彼女の後を追う。
そして肩に手をかけ捕まえようとした時、既に楊香はインターホンを押していた。
「何て説明するつもりだ? 俺達は……」
家主の最愛の人を殺した組織に属しているんだぞ、という暁龍。
が、楊香は動じる様子はない。
「別に。本当の事を言えば良いんじゃない? ……留守かしら」
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