──Ⅱ──

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 事前になんの連絡も入れずに来たのだから、留守でも不思議はない。  また、このご時世だ。  モニターで見ず知らずの来訪者を見た家主が居留守を使ってもおかしくはない。  暁龍がやはりアポイントを取るべきだろう、と楊香に苦情を言おうとした時だった。  かすかな息遣いがスピーカーから聞こえてくる。  目を輝かせる楊香を止めるのを諦めた暁龍は、その場の成り行きに任せることにした。  一方の楊香は、嬉々としてインターホンに話しかけている。 「ショーンさん、ご在宅ですか? 突然すみません。お嬢さんのことでお伺いしたいことが……」  しばしの沈黙。  無理もない、これではただの不審者だ。  あまりにも直球すぎる楊香の物言いに、暁龍は頭を抱えたくなった。  しかしこのままでは無駄足になる。  仕方なく暁龍は楊香を押しのけると、インターホンのカメラに身分証を提示しこう告げだ。 「ルナ惑連支局の黄暁龍、こちらは同じく楊香です。……テラのジャック•ハモンドの友人と言えば、用向きはご理解いただけますか?」  さらなる沈黙。  ジャックの名を出したのは間違いだったか、と後悔しかけたとき、スピーカーから弱々しい女性の声が聞こえた。
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