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「ところで……お嬢様が失踪されたのは二年前、でよろしかったでしょうか? 」
相変わらず遠慮の無い楊香の物言いに、暁龍は気付かれないようにそっと溜息を漏らす。
そして、胸ポケットから電子メモ帳を取り出し記録を取るふりをしてベスの反応を観察することにした。
「……正確に言えば、二年半です。アリスは必要な単位を取得し終えて、早期卒業の手続きを取りましたから」
卒業に必要な単位を取り終え早くに卒業し、入学までの半年間をアルバイトやボランティア活動などの社会勉強に充てるのは今や一般的なことだ。
だが、アリスの場合はそうではなかった。
自由に使える半年間を、I.B.との接触に使ったのだろう。
「大学の講義に出ていないと報告が来て私が訪ねた時、下宿先は綺麗に片付けられていて……」
「無理矢理連れ去られたと言う様子ではなかったんですね。でもどうしてI.B.だと? 」
「部屋の端末は完全に初期化されていて、机の上にはこれが……」
そう言うと、ベスはポケットから少々くたびれた手紙を取り出して、テーブルの上に置いた。
紙の劣化具合から判断するに、文字通り肌身離さず持っていたのだろう、暁龍はそう分析した。
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