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部屋の入口で立ち尽くす楊香に声をかけられて、暁龍はうるさげに振り返る。
が、いつになく真剣な面持ちの彼女に、暁龍はその表情を引っ込めた。
「いや、口はつけていない。……何かあったのか? 」
「念の為、成分分析してみたの。……かなりの量の睡眠薬と抗不安薬が含まれてた」
「……何だって?」
それだけ入っていれば、苦くて飲めないはずだろう、そう言う暁龍に、楊香は首を左右に振る。
「サンダ産のお茶は、風味が独特なの。こういうものだ、と思えばあるいは……」
そこまで聞いて、暁龍は楊香を突き飛ばすようにして部屋を出る。
そして階段を駆け下り、リビングへ飛び込んだ。
「ショーンさん! 」
暁龍の目に飛び込んできたのは、ゆかに倒れ付す未亡人の姿だった。
静かに近寄り、注意深く抱き起こすと、息はあるものの意識はない。
彼は未亡人をソファに横たえると、あとから来た楊香に向かい矢継ぎ早に指示を出す。
「車から医薬品……点滴キットを。それとアダムス博士に連絡。飲んだ薬種と量を伝えて処置方法を聞いてほしい」
「わかった」
楊香は身を翻し、室外へと走る。
その後ろ姿を見送りながら、暁龍はショーン未亡人の無事を祈らずにはいられなかった。
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