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「ご令嬢は、お母上が探してくれるのを……手を差し伸べてくれるのを待っている。自分の勝手な思い込みですが」
涙で顔が汚れるのもいとわず見つめてくる未亡人の視線を正面から受け止めて、暁龍は冷静な口調で続ける。
「あなたが我々を恨む気持ちはわかります。ですが、自分はご令嬢をお助けしたい。それは事実です」
無論今更信用しろと言うのは無理な話ですが、と話を締めくくると、暁龍は軽く会釈をして立ち上がろうとする。
刹那、ベスは思いもかけず大きな声を上げる。
「待って! どうしてあなた達は何ともないの? だって……」
その言葉に、暁龍は困ったように息をつく。
「失礼とは思いましたが、自分は口をつけませんでした。彼女は……少々特異体質なもので」
その時、暁龍のポケットで呼出音が鳴った。
失礼、と断りを入れてから彼は電話を受ける。
二、三言葉を交わした後彼は端末をベスに差し出した。
テレビ通話モードになっている画面に映し出されているのは、他ならないジャックの姿だった。
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