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新たなる騒動
ここは日本で一カ所しかない外国との貿易を許された長崎にある港である。
数々の困難を乗り越え禅宗達は遂に江戸からの長い旅路を終えようとしていた。
途中では日本存亡の戦いに巻きこまれ何度も死地をくぐり抜けてきた3人は固い絆で結ばれていた。
禅宗達の日本での旅が終わろうとしていた。
「着いた~!!」
長崎に到着した瞬間に僧侶の格好をした赤髪の少年が叫んだ。
「馬鹿!! やめろ孔士。恥ずかしいだろうが」
「まったく孔士は落ち着きがない子供だな」
日本の刀を携え白いマフラーを巻いた侍の
少年と杖に模した仕込み刀を持った凛としたたたずまいの少女が呆れながら孔士を睨みつける。
「いや。美琴には言われたくない」
「なんだと!!」
いつものように喧嘩を始める孔士と美琴を迷惑そうに見る町の人間達。
「やめろお前ら。少しは静かにできないのか?」
なだめようとする禅宗。
「だって」
「だがな」
子供のように膨れる2人に頭が痛くなる禅宗。いつも子供のように喧嘩する2人に悩まされる旅路であった。
「ほら他の通行人に迷惑だからさっさと歩け」
通行人の視線が痛くなってきたので急いで移動したい禅宗。
「は~い」
「・・・わかったぞ」
しぶしぶ2人は禅宗の後をついて行く。
「このまま宿を捜して一泊するぞ」
「船は捜さないの?」
「さすがに長旅だったからな。宿で一息ついてからだ」
「やったぁ!! 久しぶりに布団で寝れる」
「美琴もそれでいいか?」
禅宗が後ろを振り向くと美琴の姿がいつの間にか消えていた。
「・・・孔士」
「なに?」
「美琴は?」
「・・・しらない」
禅宗と孔士は互いに向き合うと
「「はぁ~」」
深くため息をつく。
「同じ事が前にもなかったか?」
「あったね」
「少しは大人しくできないのか美琴は」
「まぁ・・・無理だね」
禅宗は疲れた顔をしながら美琴を捜すためにトボトボと歩き出す。
その後ろ姿は子供の振り回される親のように哀愁が漂っている。
「孔士」
「なに?」
禅宗は疲れた顔をして孔士を見る。
「このまま一緒に捜してもラチがあかないからお前は宿探しを頼む」
「わかった」
「それとなるべく安い所でいいからな。後飯は俺たちが戻るまで我慢しろよ」
「え~いいじゃん。ご飯くらい」
孔士はご飯のお預けに文句をたれるが
「破産させる気か!!」
禅宗の鬼の形相に押し黙る。
以前同じ事があり孔士は先に食事をとったのだがその量が凄まじく危うく路銀が尽きかけたのだ。それ以来、禅宗は孔士の食べる量に目を光らせていた。
「それじゃぁ行ってくる」
「はいよ。気をつけてね」
禅宗ははぐれた美琴を探しに町の中を歩いて行った。
「禅も大変だね」
孔士は苦笑いしながら呟く。
「さてと。宿を探しますかね」
めんどくさそうに町を歩いて行くのであった。
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