春の匂い、夜の海

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白い指が背中のリボンを解く。圧迫が消えた隙間に、息を深く吸いこむ。 あなたの腕に抱き抱えられ、暗い寝台の波間に沈む。 ねえ、本当ははしたないのかしら。 こんなふうにあなたを求め、こんな声を漏らすなんて。 あなたが何も言ってくれないから、私にはよくわからない。 だってすべてあなたが初めてで、あなた以外何も知らないから。 あなたの鼻先が私の首筋をなぞり、鈴蘭だ、と言って微笑む。 あなたからはいつも、幸福の匂いがする、と。 群青の闇。 あなたの肌が、蒼白い月のように浮かび上がる。 暗い波間から夜空を見上げ、その月に指を伸ばした。 瞼を閉じ、意識を沈める。 柔らかな、漆黒の底へ。 彼に抱かれていると、なぜかいつも思うのだ。 まるで、夜の海を泳いでいるみたいだと。 Fin
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