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2“ともだち”の価値観
「ところで、みんなはもうランチ食べたのか?」
靖陽くんが僕らに聞く。僕達は首を振った。
「それなら、一緒にランチ食べに行かないか?
近くにファミレスあるし。どうかな?」
祥二くんと和広くんは賛成した。しかし祥二くんは、ふいにハッとしたような表情になった。
「あ、でも行く前にATM寄って良い?1000円、引き出したいから…」
祥二くんは、両手を合わせて困り笑いを浮かべた。
「OK!じゃ、セブンの前で待ってる」
和広くんがそう言い、靖陽くんは、焦んなくていいからな!と祥二くんの肩に軽く手を置いた。
「氷月はどうする?」
和広くんが聞いてきた。
「僕は、お弁当持ってきてるから、大丈夫。
そろそろ行くね。」
3人が頷く。お互いに手を小さく振って、校庭を去った。
**********************
俺は校庭を去っていく優克を見て、疑問に思った。…彼は1人が好きなのか?どことなく、よそよそしいというか素っ気ない感じがする。
さっき優克に送ったLINEのチャット画面を見る。1文だけの返信に、本当に素っ気ないなぁと苦笑した。
画面から目を離し、祥二と和広を見る。2人は冗談を言い合って笑っている。めちゃくちゃ仲がいいなと思う。ふと、自分には仲が良いと思える人がいるだろうかと疑問が浮かんだ。
自分にとって親友と呼べるような、かけがえのない大切な人はいるんだろうか?いつか、そんな人に巡り会えるだろうか?今はまだ分からない。グルグルと堂々巡りに近い考えが頭の中を支配している。それを振り払って、2人に声をかけた。
「祥二、和広。お前たちっていつ見ても仲良しだよな。前から知り合いなのか?」
「そうだよ」
和広が答えた。
「幼馴染ってほどでもないけどね、中2の時からの付き合いだよ!俺はあの時、転校生で周りに友達がいなかったんだよね」
和広は当時を懐かしむように遠くを見つめた。
「慣れない環境で心細いし、親としょっちゅう喧嘩してたから家にあまり帰ってきたくなかったし。そんな時に声をかけてくれたのが祥二だったんだよ。『一緒にゲームしようよ』って」
和広は嬉しそうに微笑んだ。
「そうだったんだ」
初めて聞く話だった。誰とでも打ち解けられる印象があったから驚いた。
「祥二は、どうして声をかけたんだ?」
気になって聞いてみた。祥二は、上を見上げる。当時のことを思い出しているようだ。
「えっと…僕もあの時、友達だって胸を張って言える人いなかったからかな。1人でもいいから友達が欲しかったんだと思う。和広くんと友達になるまでは、クラス内で色々あったから学校休みがちだったんだよね…。」
「そっか…。でも、お互い友達になれて良かったじゃん!高校も同じだったのか?」
少し空気が重くなったような感じがして、努めて明るい声音で話した。それと同時に、彼らの当時の気持ちに共感できる部分があった。
(この2人も過去に何かあったんだろうな……俺と同じようなできごとではないとしても)
「高校は別だったんだ。でも、連絡先交換してたから休みの日に会ったりしてたんだよ!」
「でもまさか、大学で会うとは思ってなかったな!」
和広が笑った。空気が心なしかさっきと同じ明るい雰囲気に戻ったような気がした。
「だよね!僕もびっくりしたよ!」
祥二も笑った。俺は、へぇそんなこともあるんだと目を丸くした。今まで、昔あった人と再会するなんてことは小説の中の話だろうと考えていたからだ。不思議なものだ。
意表を突かれたことといえば、さっきの話し合いもそうだったと思う。俺たちの考えはみんなバラバラだったなと思い出した。
祥二は“自然体で話せる存在”、和広は“気づけば傍にいる存在”、優克は“気が合う存在”、そして俺は“どんなことも一緒に乗り越えていく存在”
友達の定義について話してみても、それぞれ考えていることは違うんだなぁとしみじみと感じた。
「あ、そうだ。忘れてたけど、ファミレス行こうよ!」
祥二が俺と和広に言った。そうだった。まだ、ランチ食べてなかったんだった。話に夢中になってつい忘れていた。
「ファミレス行く前にセブン行くんだよな?」
「うん、すぐ終わるから!」
OK、と和広と一緒に答えた。ベンチから立って3人揃って校門へと歩いていった。
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