3ファミレスでの会話、和広の悩み

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3ファミレスでの会話、和広の悩み

ファミレス店内は、ちょうどランチの時間だからか多くの人で賑わっている。俺と祥二、渡邊(わたなべ)は奥の窓際の4人席に通された。店員がメニュー等を持ってきてくれる。 「お冷とおしぼりをどうぞ。こちら、メニューになります。ご注文がお決まりになりましたらボタンでお知らせください」 店員はそう言って、お辞儀したあと席を離れた。 早速メニューを開いてそれぞれ何を頼むか決めた。ボタンを押し、注文を取りにきた店員にメニューを告げる。俺たちが頼んだ注文を復唱し間違いがないことを確認すると、一礼して立ち去った。 「そういえば、今週末からゴールデンウィークじゃん?祥二と和広はなんか予定あったりすんの?」 渡邊が切り出した。ゴールデンウィークは祥二と一緒にプラネタリウムに行く予定だ。ほかにも館内には動物の剥製、鉱石など科学好きにとっては申し分ない展示物がたくさんある。プラネタリウムを見終わったあとは、展示物を鑑賞して楽しもうと決めていた。 「プラネタリウムに行くんだよ」 祥二が言った。 「なんでプラネタリウム?」 「僕達、宇宙とか星とかが好きだから。」 そうなんだ、と渡邊は言った。彼はあまり宇宙に関して興味がないらしい。森や川などの身の周りにある自然のほうが好きと言っていた。 「渡邊は?お前はゴールデンウィーク、どう過ごすの?」 「いや…思いつかなくてさ、どうしようかなって思ってる。あ、そうだ。」 渡邊は何を思いついたのか、スマホを取り出すと操作し始めた。 「これでよし、と」 文字を打ち終わった渡邊は何やら満足気にスマホを机に置いた。 ちょうどその時、頼んだメニューが席に届いた。それぞれ自分達が頼んだ料理を店員が机に置いてくれる。そして伝票を机の上に置いてある透明の筒の中に入れると、ペコリと一礼して去っていった。 手を合わせて、いただきますと言って食べ始める。美味しい。家族以外で外食をするのは久しぶりだった。黙々と食べ、ごちそうさまでしたと手を合わせた。全員が食べ終わるのを待って、席を立つ。割り勘にして支払いを済ませた。店を出る時、カランカランとドアに付いているベルが鳴った。 「このあと授業あるの?」 祥二が俺と渡邊に聞く。俺は首を横に振った。渡邊も講義は無いらしく首を左右に振った。 祥二は2限続けてあるようで、ファミレス前で別れた。渡邊と並んで下校することになった。 しばらく歩くと、駅に続く道と小さな小道に続く道とで分かれる場所に来た。渡邊は、駅に向かうらしく、ここでお別れとなった。 1人で道を歩く。ふいに中学から1ヵ月前までずっと母から言われている言葉を思い出した。 『何で人から貰った大切なものも、まだ使うかもしれない教科書も捨てようとするの!』 注意されると逆に気持ちが冷めてしまうようで、何も言い返さないでいる。そうすると益々怒りを買うらしく、黙っていないで言葉にしろと言われる。いつも春になるとそうだった。自分から見ると春という季節は、出会いと別れの時期というより、人も物も関係なく断捨離ができる季節だと感じる。 (こっちから言わせてもらえば思い出の品なんてあってもかさばるだけにしか思えないんだよな) 人から貰ったものが要らないわけじゃない。貰ったら嬉しいし、大切にする。だけど、なぜか捨てたくなってしまう。自分でも原因が理解できてない。だから厄介だ。 それに加えて、今は親との仲が悪い。昔ほどではないが、あまり家に帰りたくない。 「…はぁ…。何で全部捨てたくなるんだろ」 立ち止まって小さく呟いた。でも、声に出しても答えは見つかりそうになかった。
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