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1原っぱでの会話
キーンコーンカーンコーン
2時限の講義が終わるチャイムが鳴った。大勢の学生が友人と話し合いながら、講義室を出ていく。僕は1人黙々と荷物をまとめ、講義室を出ようとした。その時だった。
ピコン
通知を知らせる音がした。なんだろうと思ってスマホを見る。どうやら渡邊靖陽くんからのL I N Eの通知だったようだ。
ー昼休み、時間ある?あったら校庭の原っぱに集合な!ー
どうしようかと迷った。なぜなら僕は彼が苦手だったからだ。
しかし、わざわざLINEしてきたということは何か伝えたいことでもあるのかもしれない。
ー分かった。昼休みだよね?時間あるから行くよ。ー
送信し、講義室から出た。
僕、氷月優克が通う霧櫻大学は四年制大学で、都内にある。といっても、新宿や渋谷などの都市部ではない。多摩地域にあるので知らない人が多いと思う。しかも、私立だから学費が高い。けれど、自然が多く、山や川も近くにある。校内の講師や事務員さんたちも皆親切で、アットホームな大学だ。あまり知られていないけれど、僕はこの大学に入学できて嬉しいと感じている。
昨年に入学して今は大学2年生。
来年からはインターンシップが始まる。情報学部だから、IT企業にインターンシップ先を決めた。
クラスメイトは友達と一緒にインターンシップを決めたらしい。
(そんなに友達と一緒にいて何が楽しいんだろう。群れるのが好きなだけなんじゃないの?)
一緒にインターンシップに行こうねという同級生の会話を聞く度、そう思っていた。
昼休み。LINEのチャットの通り、校庭の原っぱに向かった。晴天ということもあり、校庭には大勢の大学生が少数のグループに分かれてランチをしている。ベンチに3人の男子大学生が座って話している。そのうちの1人が僕に気づいて手を振った。彼が渡邊靖陽くんだ。
渡邊靖陽くんは、僕と同じ情報学部の同級生だ。いつも明るく、笑顔でいることが多い。男女問わず友達がいる印象があった。
「よっ!来てくれたんだな!優克!」
彼がにこやかに笑う。
「もしかして、来るの遅かったかな?」
待たせてしまっていたかもしれない、と思い申し訳なく思った。
「いや全然大丈夫!」
「優克くんも座りなよ!」
と、靖陽くんと会話していた男子大学生2人が席を作ってくれる。
「ありがとう。祥二くん、和広くん。」
2人にお礼を言ってべンチに座った。
髙橋祥二くんは、天文学部で星や宇宙に目がない同級生だ。
仲野和広くんは、考古学部で科学と世界史が大好きな同級生。
彼らと僕は1年生の時、ゼミが一緒だったこともあり、連絡先を交換していた。
「ところで、どんな話をしてたの?」
気になって先程、3人が話していた内容を聞いた。
「自分にとって友達はどういう存在なのかっていう話し合いをしてたんだ!」と靖陽くんが言った。「全員違う考えで面白かった」と和広くんが続けた。
「優克くんは?きみにとって友達はどういう存在なの?」と祥二くんが聞いてきた。
「う~ん…なんだろう…」
聞かれるとすぐに答えられない。僕にとっての友達?友達がどんな存在か?そもそも友達という単語自体、ないもののように過ごしてきた時期があるから余計に分からない。
しばらく考え続けてやっと答えることができた。
「…気の合う人、かな?」
たぶん、と続けそうになった。内心、友達という存在は必要だろうかと思った。
3人は、僕の出した答えに「それもいい考えだね!」と認めてくれた。
そういえば、僕たちが校庭に集まった意味はどうしてなのだろう?不思議に思って召集を促した靖陽くんに聞いた。
「ところで、どうして僕たちを集めたの?」
靖陽くんは、何でもなさそうにケロッとしている。
「あぁ、特に意味は無いよ。よく、祥二と和広とは話すけど、優克とは話したことがなかったからどんなこと考えているのかなって興味があったんだ。それで優克も誘ったんだよ。」
そうだったのかと納得した。しかし、僕としては嬉しくない。苦手な靖陽くんに興味を持たれたところで、嬉しさよりも鬱屈とした気持ちが勝る。
(…どうして僕に興味を抱いたんだろう)
疑問に思ったが、彼の好奇心に自分も巻き込まれそうで嫌だったから心の中に留めた。
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