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「『海岸沿いに横たわっていたその奇妙な生物は、全身が焼け焦げた状態で発見された。人とも猿ともつかないフォルムに鋭い爪、額には二本の角……なんらかの事故によって焼け落ちてしまったのか、背中には翼のようなものが生えていた形跡も――』」
「読み上げてくれなくていいぞ。俺もニュースで見たから。オチは珍しい海の生き物でしたーとか誰かのイタズラでしたーとか、どうせそんなんだろ」
「まだ! まだ解明されてないから! 鬼を祀る神社の息子はそんな現実的なこと言わない!」
「神社の息子に対するひどい偏見だなおい」
適当に志乃をあしらいながら耳をすますと、同じ話題で盛り上がっているらしい声が教室中からちらほらと聞こえてきた。視線をそらしていることをとがめるように、俺の机に両手をついて志乃がずいと身を乗り出してくる。
「時空の狭間を抜けて異世界から現れたモンスターとか神の怒りに触れてその身を焼かれ地上に落とされた堕天使とか死体を処理したい殺人犯のカモフラージュとかそういう可能性がね? いくらでもあるわけじゃないですか、桃原成海くん」
「そりゃあ俺だってそのニュースを聞いた直後は、中二心をくすぐられたけどさ。てか三番目は普通にやばいだろ。あと突然のフルネームやめろ」
なおも畳みかけてこようとした志乃の口をふさぐように、本鈴が鳴った。
「おい、もうホームルーム始まってるぞ、席に着けー」
廊下の前で待機していたんじゃないかというほどジャストなタイミングで、担任であるところの髪の薄い現代文教師、通称、現文ハゲが教室に入ってくる。
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