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プロローグ ~非日常のふりした日常~
惜しげもなく朝の光が差し込む学校の廊下に、予鈴が響く。
一日の始まりを予告するその音に、俺は少しだけ足を速めた。朝の時間に廊下を走れば、どこからともなく教頭が現れるのは、高一の時点ですでに学習済みだ。
大丈夫、走らなくても余裕で間に合う。
電車通学二年目の俺に隙はない。五分程度の列車の遅れに動じたりはしない。
ガラッ。
「成海、おっはよおおお!」
教室のドアを開けた瞬間、上からふわりと影が差す。
ひらめく水色のスカートと、むっちりとした太もも。一瞬で俺の視界を埋め尽くしたそれらは、次の瞬間ものすごい勢いで俺の顔面に突っ込んできた!
「ねえねえねえちょっと見た見た聞いた? 昨日のニュース!」
「……いや、その前にちょっと落ち着け」
廊下に押し戻され、なおかつ押し倒される形になった俺の顔面に、雪宮志乃の太ももが押しつけられる。柔らかいぬくもりに挟まれながら、そして本能による衝動を抑えつけながら、俺の顔面に馬乗りになった志乃をできるだけ冷静になだめる。
「もうカラパイヤにも記事がのっててね! ちょっと待ってね、今――!」
「いやだからまずはそこをどけっつーの!」
俺の鎖骨のあたりをこれまた肉付きのよい尻で圧迫したまま、スマホの画面をいじり始める志乃の下から叫ぶ。
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