ラブリー・フレンドシップ!

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 ***  まさか、のトラブルが起きたのは。  まさに成人式当日、その三日前になってからのことである。 「え……どういうこと、ですか、それ」  どういうことなのか、まともな説明はほとんどなかった。ただ突然三日前に自宅に“着物レンタル・につき”から連絡が来て、突然予定していた着物が手配できなくなったと言われたのである。  着物はないし、着付けとメイクの業者も手配できなくなりました、ごめんなさい。こちら側のトラブルです、返金対応などについては後日相談させていただきます。――言われた言葉は、それだけ。何が何だかさっぱりわからなかった。大混乱で、まともに質問することもできないまま電話は切られてしまったのだから。  返金とか、そういうことよりも。  成人式で、突然着物の着付けができなくなってしまった。その方が遥かに問題だった。 ――そ、そんな……どうしよう、どうしよう、どうしよう!  寧々と花林は、私と一緒に成人式に出るのを楽しみにしてくれていた。成人式のような緊張する場であっても出ようと思った理由の半分は、なんだかんだで着物を着たかったからで。もう半分が、大好きな彼女達とはれの日をお祝いしたかったからなのである。  だが、着物が着れなくなってしまったともなれば、私には当日着ていく服がない。まさかあんな場所に、普段着で行く度胸なんてない。スーツを着て行ったとしても、殆どの女子が着物で来るだろうと予想できる手前浮いてしまうのは免れられないだろう。ただでさえ緊張ガチガチなのに、美人でもなんでもないのに、一人だけ浮いた服装で行く勇気など私にはなかった。 ――でも、急に休むなんてそんなの、寧々と花林に申し訳ないよ……!  私は暫く、呆然とその場に座り込むしかなかった。――いつものように、明るく元気な声で寧々が電話をかけてきて。彼女に、泣きながら全部をぶちまけてしまうまでは。  寧々は教えてくれた。着物レンタル・につきに依頼した新成人の何人かが、着物が届かなくなったとツイッターで呟いているということを。どうやら、関東近郊で配送トラブルが起きているらしいということを。  そして、彼女は大パニックに陥っている私を宥めて、言ったのである。 『……よし。だったら、こうすんのはどうだ、雪見?』
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