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「あんた手芸部だったじゃん?高校の時、体操着とか制服のボタンとか……ほつれたり取れたりした時、あたしが頼むよりも前に手芸セット持ってきて直してくれたよね。あー、あとあたしが気持ち悪くてトイレ行きたいけど授業中に手を上げるのきついーってなってた時、あたしの不調に気づいて保健室に連れて行きます!って先生に声かけてくれたのもあんただったわ。普段は目立つのが怖くて仕方ないくせに、友達のためならそういうことできちゃうわけだよ。すごくね」
「そ、それは、別に」
高校三年生の時のあれだろう、と心当たりの出来事を思い出す私。あの時は、緊張よりも怒りが勝っていた。寧々が紙のように白い顔で凍り付いているのに、先生がまったく気づかないのだから。
「そうダヨ。花林も知ってるんだあ、雪見ちゃんのいいところ」
ふふーん、と何故か胸を張っていう花林。
「持久走で、いっつもドべだった花林と一緒に走ってくれたの誰だー?あれがあったから、花林はマラソンの授業が辛くなくなったのです。雪見ちゃんはもう少し前で走れたのにさ」
「花林……」
「そういう良いところ、もうちょっと雪見ちゃん自身が認めるべきだと思うのです。以上!」
成人式を、休むしかないかと思って絶望していた。
友人二人に迷惑がかけるのが怖くて、レンタルショップから電話が来た直後は消えてなくなってしまいたいとさえ思っていたのだ。でも。
「んじゃ、そういうわけで」
がしり、と。寧々が私と花林の肩に腕を回して、にっかりと笑って言うのだ。
「三人仲良く受付してきますかー!みんな一緒なら恥ずかしいことなんて何もねえ、堂々としてよーぜ!」
「……うん!」
着物なら、あとでもう一度どこかで借りればいい。
でも本物の友情は、けしてレンタルしてくることなどできないわけで。トラブルの結果、私は一番大事なことを見失っていたことに気づかされたのだ。
「ありがとう。行こう、寧々、花林!」
ラブリー・フレンドシップ。
私達はこれから先、どんだけ一人になることがあっても、きっと独りきりにはならない。
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