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ぼくは学校というものに行ったことがない。そんな山奥に住んでるからだって?それもある。うちは始祖さまの血を引き継いでる由緒ある純血種で、ご先祖さまがそこにお屋敷を建てて以来ずっとそこに住んでいるからね。
難しい事はよく分からないけど、国とも話はついていて何の問題もないみたい。
それと、学校に行けない理由はもう一つあって。
「血が苦手?」
「そうなんだ。うちの一族は皆そうらしくて、ぼくも多分そうだろうって兄さんたちが言ってた」
あれからミツキに寮のぼくたちの部屋に連れていってもらって、初めに言われたのが同じ学年だから普通に話してほしい、だった。どうやら、同じ学年の人たちには普通に話しても良いみたい。
そんな話は興味ないか。
やっぱり、吸血鬼なのに血が苦手という事の方が気になるよね?だって、普通に考えておかしいもの。ぼくだってそう思う。
現代の吸血鬼は血を吸わないのか、といったら答えは「いいえ」だよ。
だけど、別に血を吸わなくても生きていける。現にぼくは、血を口にしたのは今までに一度だけしかない。覚えている限りね。
兄さんたちは飲んでるんじゃないかな?どんな風に飲んでいるのかは知らないけれど、たまに甘い香りがする時があったから。
「よし、っと。手伝ってくれてありがとう、ミツキ」
何を持ってきたら良いのか分からなくて元々少なかったけど、ミツキが手伝ってくれたおかげで荷解きが早く終わって良かった。
「いや」
どうもミツキは話が得意な方じゃないみたい。ぼくの兄さんたちは二人とも、ぼくを楽しませる為にたくさんお話をしてくれていたから差が激しい。寂しいといえば寂しいけど、別に嫌いじゃないかな。
「飯か」
「えっ?」
「時間。夕飯」
ユウメシ……えっと、ディナー?
「買いに行くか」
あー。パンフレットに載ってたっけ。確か、ここでは自分で作ったり買いに行ったりするだよね?自立がどうのこうのって。ジリツって何?って辞書で調べたり兄さんたちに聞いたら、独り立ちする事だって知ったんだ。自分で立つ、で自立。凄いね。
「それとも、何か作るか?」
「ミツキは作れるの?」
「簡単なものなら」
「凄いね!ぼくはご飯を作っている時の厨房に入った事なんて一度もないよ」
凄いなぁ、とぼくよりも頭二つ分ほど背の高いミツキを見上げていると、ふっと苦笑されてしまった。
「今日は奢る」
「オゴル?」
「ごちそうするってことだ」
ごちそう……良いのかな?友達でもないのに。
不安が顔に出てしまったのか、またミツキに笑われた。
「祝賀会……お祝いな」
そっか。それなら素直に受け入れた方が良いんだよね?
「ありがとう」
「どういたしまして」
良かった、ミツキがルームメイトで。この分なら、これから上手くやっていけそう。
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