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「ニナくんだね、我が学園にようこそ。君のことは君のお兄さんたちから聞いているよ。さっそくだけど、君にこれらを用意した」
イブキに連れてきてもらった理事長室でぼくを待っていたのは黒髪のとても美しい人だった。兄さんたちが言っていた通りのクールビューティ。なんでも、ぼくたちの事情をよく知る人間なんだとか。……うん。
それで、えっと。
「これはなんですか?」
あっ、教科書に載ってる最初の一文!こんな典型的な会話文絶対話さないよ、なんて思ってたのにまさか使う日がくるなんて。
「これはかつら、ウィッグだよ。で、こっちは眼鏡」
見たら分かるよ、ぼくだって。
「ではなく、これらは何に使うのですか?」
もしかして、ぼくに身につけろって?いや、まさかね。
「今から君が身につけるものだよ」
「えっ!?」
う、嘘でしょう?
「何故ですか?」
ぼくはどこか外見がおかしいのかな?それとも、吸血鬼だっていうのが分かりやすい?
「ふふっ」
えっ、笑われた?どうして?
「君はお兄さんたちと違って、自分の外見がどれほど魅力的なのか分かっていないようだね」
魅力的?このぼくが?
「過去にも同じ事があったんだ。まあ、結局途中で変装を止めてしまったんだが。おかげで騒ぎになってしまったんだよ」
「……はあ」
そう言われてもなぁ。
「君も静かに暮らしたいだろう?」
「……はい」
だって、ぼくはここに『あの子』を探しにきたのだから。
「じゃあ、波風を立てないためにも、これらは君にとって必要なアイテムだ」
「波風?」
どういう意味?海が近くにあるの?
「ああ、いや、穏便に……目立ちたくないなら、かな」
「……この国の言葉は難しいですね」
確か、ここには図書館があったはず。兄さんたちからもらった地図に載っていた気がする。あとで行ってみようかな。
「君はとても勉強家だと聞いている。だから、私は君の編入を受け入れたんだよ。心から君を歓迎する、ニナ・ブランシェくん」
クールビューティでも笑顔になるんだ?ぼくだって、兄さんたちにもだけどこの人にはとても感謝してるんだ。
えっと、名前はなんだっけ。……確か。
「シイナさん。ぼくの方こそ、とても感謝しています。ありがとうございます。これから、よろしくお願い致します」
ーーで、良かったんだよね?他に言わなきゃならない事なかったよね?
兄さんたちの名誉にかけて、ぼくはぼくのために頑張らないと。
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