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3.「……よろしく、ニナ」
この学校、学園というべきかな?ーーは、この国ではそこそこ有名であるらしい。というのも、ぼくの暮らしていた場所では考えられないぐらいに広くて近代化した一つの都市のようになっているんだ。
信じられる?寮から歩いて数分の所にスーパーマーケットがあるんだよ。他にもレジャー施設があるらしいけど、ぼくは行かない。外に出るのは恐いもの。
異国で土地勘もないから、シイナ理事長さんに細かく教えてもらっていたらあっという間に夕方になっていた。夕方だって分かったのは、シイナ理事長さんが時計を見て「もう夕方ですね」って言ったからなんだけどね。だって、ここに到着したのが何時だったのか分からなかったし。
「それじゃあ、ぼくは寮に向かえば良いのですね?」
えっと、地図地図……まずはここがどこにあったか……だけど。
「ああ、それなら」
うん?
「迎えを頼んでおきました」
迎え、とは?地図から顔を上げたタイミングで理事長室の扉がノックされる。
「名前は開けてからで結構です。良いタイミングですね」
もしかして、迎えというものなのかな?変装は既に済ませてあるけど、それ以前に人に会う事にとても緊張してしまう。昼間のイブキのようなことはないと思いたいけれど。
「一年三組の千歌 満月です。ルームメイトを迎えにきました」
開いた扉から現れたのは、表情が無いというか無愛想という表現が似合う男子学生。彼も黒髪だけどすごく短くて顔周りがすっきりしている。
所で、ルームメイトって。
「ニナくん、ここでは彼と同じ部屋で暮らしてもらうよ。君がいた場所とここでの生活は全く異なるから、彼にサポートをお願いしたんだ」
やっぱり、ぼくだった。
そっか、二人部屋だと兄さんたちから聞いていたけど、この子がぼくの。
「千歌くん、彼はニナ・ブランシェくん。前に言っていた海外留学生だ。きっと分からない事ばかりだろうから、しばらく助けてあげてほしい」
「分かりました」
……あ、目が合ってしまった。えっと、この場合はどうしたら。
「俺は千歌 満月。宜しく」
先を越されちゃった。え、えーっと、名前は逆。
「ミツキ、で良いですか?ぼくの名前はニナ・ブランシェです。オ、オセワになります」
で、合ってる?
この人は友達じゃなく、ルームメイトだもんね。ぼくだって線引きぐらい出来るよ。友達以外は名前で呼ばない。
「……よろしく、ニナ」
ニナ?うん?どうして、そんなフレンドリーなの?もしかして、学校ってそういう感じ?うーん……でも、何故かこの人戸惑った気がしたけれど。もしかして、ぼく何か間違えたかなぁ。
「では、あとは宜しく頼んだよ。ニナくんは何か心配事が出来たらいつでもおいで」
「はい。ありがとうございます」
そうだよ、ここに来たのは生半可な気持ちじゃない。
ぼくは兄さんたちに頼らず、自分でやれることはやってみるんだ。
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