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モノローグ
何度も何度も夢を見るんだ。
幼かった頃、偶然出逢ったあの子の夢を。
何者かから逃げるように身を縮こまらせて大きな木の陰に隠れていたのを見つけたんだ。
あの子はひどく怯えてた。
誰?と声を掛けたぼくの声にも怯えてた。
きれいな涙を溢す瞳がぼくを捉えて、不安を隠すことなく「誰にも言わないで」と口にした。
あの子と交わした初めての約束だった。
いいよ、と言ったらあの子は泣きながら微笑んだんだ。
それはとても美しい笑顔だった。
けれど、ぼくは――その時のぼくは、とても白くてきれいなあの子の肌の下を流れる真っ赤な血液は一体どんな味がするのだろうかと、そればかり考えてしまっていたんだ。
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