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ねぇ、聴いて。
これは、俺と愛しいあいつの物語。
「母さん、ただいま。」
いつものように大学を終えて家に帰ると、玄関に見慣れぬ大きなスニーカーがあった。
なんだか悪い予感がして、
急いでリビングへ向かうと、そこにはあいつが居た。
久しぶりに顔をみた。
高校生のお前は、俺が思っていたよりもずっと男になっていた。
スラリとした身体には確かに筋肉がついていて、あんなに丸かった顔は直線美を描いている。
でも、あの頃と変わらない、
お前のふわふわとした栗色の髪と同じ色の瞳が
俺を駆りたてる。
今まで秘めていた情欲が溢れる前に、どこかへ隠さなければ。
母さんが夜のパートへ出かけて、あいつと2人きり。この状況はよくない。
俺にとってもあいつにとっても。
そう思っていたら、スマホの通知が鳴った。
「今からこれる?」
1ヶ月ほど前に知り合った消防士の男だった。
丁度良かった。報われないこの気持ちを
誰でもいいから発散したい。
「出かけるから...」
はやく逃れたい。
この気持ちから。お前から。
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