本編②

7/10
前へ
/23ページ
次へ
ねぇ、聴いて。 これは、俺と愛しいあいつの物語。 「何すんの、」 あいつに聞かれてドキッとした。 俺が今からするのは、お前には言えないことだよ。 あいつが拗ねた子供みたいな顔をするから、 思わず昔みたいにしてしまった。 「ガキにはまだはやいこと。」 鼻を摘まれたお前は、ほっぺを膨らまして、 わざと息を止めるんだ。俺が困るのをわかってて。 でも違った。もうお前はそんなことするような子供じゃないんだよな。 「もう、そんなので誤魔化されないよ。」 手首を掴まれて、強引に唇を奪われる。 俺の必死な抵抗は、容易く無効化されてしまった。 そっか、そうだよな。 お前はもう俺よりも随分大きくなってしまったから。 あいつの舌が、俺の唇の境をなぞって、 こじ開けてくる。 侵入を許してしまった口内が、 ゆっくり犯されていくのを俺は感じていた。 何処でこんな技を覚えてきたんだ? こんなにかっこいいんだ。 いくらでも経験豊富な彼女がいたんだろうな。 固く閉ざしていた目を開けてみると、 あいつは熱情が篭った瞳で俺を見ていた。 脳内がとろとろに溶かされていくようだった。 脳を満たす快楽に腰が抜けてしまう。 ほんとはこのまま身を任せてしまいたい。 でも、ダメなんだ。 こんな醜い俺に、 こんなに汚らわしい俺に、「触んな。」 あいつを拒まなければいけない。 理性が俺を護ってくれた。 スマホだけ持って連絡してきた男のもとへと向かう。上着を着てこなかったから、 夜風がいつもよりも冷たく感じた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加