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『理恵さん!いつもありがとう』
好んでよく食べている
お気に入りのデザートに、
いち早く気づいた母が、
感謝の言葉を無邪気に伝える。
『いえいえ。今回のは
リモンチェッロが多めなので、
酔わないように
お気をつけくださいね』
アルコール耐性のない
母の体質を気遣いながら
フルーツたっぷりのズコットと
ヌワラエリヤ。
伯父の前にはエスプレッソのみ。
私にはズコットと
エスプレッソコンパナ。
スイーツをいただくときに
クリームが山型になって
乗っているドリンクなんて
普段だったら、決して選ばないけれど、
成田の第1ターミナルで
奏佑を見送ってからは、
しおれていく一方の私への、
エスプレッソコンパナのクリームは
理恵さんなりの、エールにも思える。
甘党の私たち母娘の胃袋を
かれこれ15年以上も、
お世話し続けてくれている
理恵さんだから、きっと、そう。
『こんなこと言ったら
親父や祖父さんには
怒られるかもしれないが』
口の中のクリームを味わいながら、
三口目のフォークを入れた頃に
伯父が、話を再開した。
『会社の方はどうにでもなる。
むしろ一族経営だ、世襲だって
こだわるような時代じゃない』
『…そうね』
母が言い添える。
『要は、家宰を取り仕切る人間、
家長は必要だ、ってことなんだ』
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