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ジャスミンティーが運ばれてきた。
「姓名判断とかはすると思ってたけど、
そんなことまでするんだね」
翡翠色のファイヤーキングのカップに
ポットからお茶を注いでやりながら、
手持ち無沙汰の相手に声をかける。
「ん。《シオリ》って、
前に使いたい人いたんだって。
でも無理だったんだって」
「無理?」
「サ行の滑舌が超悪くて。
今でも乾サンが歌詞書くの
苦労してるってマネが言ってた。
サ行の言葉を避けなきゃいけないから」
国内有数の芸能事務所グロリアに
所属していて、大物作詞家の乾拓磨に
作品提供をされるくらい売れている
女性歌手なんて2、3人しかいない。
なんとなく誰のことかわかった。
「気にいってる?その名前」
「ん、別に。どっちでもない。
周りから見て、顔と名前の
イメージが合ってればそれでいい。
ここあの為に考えた名前じゃ
ないじゃんとは思うけど」
「本名でデビューしたかった?」
湖々愛はジャスミンティーを
一口飲んでから答えた。
「でも、ここあは
《湖々愛》じゃないんだって。
だから仕方ないよね」
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