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「えっ、そんなことが……。でもどうして私その時のこと覚えてないんだろ。あ、そうか! 盲腸で入院してた時だ。それで私、学校行ってなくて……」
「うん、そうだったそうだった。ま、不登校って言ってもそんなに長い間じゃなかったんだけどね。でもすっごくつらかったしあの時のことは忘れられなくて」
「そりゃそうだよね……」
香織は悲し気に何度も頷いた。
「なぁにが私にしかできないこと、よ。バッカみたい。ま、確かにいるはずのない家族についてあんだけベラベラ喋るなんてあいつにしかできないことかもしれないけどさ。あの場で『こいつの言ってることは全部ウソでーす』ってバラしてやろうかとも思ったんだけど、流石に先生とかもいたからね。二次会で晒し者にしてやろうと思ったんだ。なのにさぁ……あいついつの間にか帰っちゃったみたいで残念」
頬を膨らませる私を見て香織が苦笑する。
「ま、彼女にとっちゃ二次会に参加しなくてラッキーだったってことだね」
「悪運だけは強いってとこね」
「そういえばさ、さっき美咲の彼の写真見てすっごい顔してたよね。何でだろ……」
「さあ? よっぽど羨ましかったんじゃないの? 散々馬鹿にしてた私にイケメン彼氏がいて自分はひとりぼっちなんだからさ」
「それはあるかもね。で、結婚の話は進んでるの? 彼氏の前ではしっかり猫被って従順で家庭的な女やってるって言ってたけど」
私はにっこり笑って頷く。
「もっちろん。猫被りまくり。あんなイケメンエリート逃す手はないもん。とりあえず結婚しちゃえばこっちのもんだしね」
そう、彼は一流企業に勤めるエリートでイケメン。しかも親は資産家ときている。絶対に結婚まで持ち込むつもりだ。
「ああ、ちょっと彼に一本電話してくる。先に二次会行ってて」
私はトイレから出るとスマホを片手に電話できそうな場所を探した。
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