落ちる彗星の娘

4/4
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
巨大な彗星が尾を引く。 近づいてくる。破滅の予感を引き連れて。 ガテガテ・パラガテ・パラサン・ガテガテ 意味のわからぬ呪文が人々の口にのぼる。 娘は金の装飾品と花々で全身を飾られ、 祭壇に祀られた美しい人形のようだった。 ガテガテ・パラガテ・パラサン・ガテガテ 娘も一緒に口ずさんだ。 燃え上がる祭火。早まる太鼓の音。落ちる彗星。 天を仰ぎ、娘は祈った。 落ちろ。落ちろ。落ちろ。落ちろよ彗星。 あたしが代わりに、落ちてやるから。 研がれた刃が、銀の尾を引く。 ゴトリ。 落ちた娘の首。 彗星が軌道を変える。 村人は歓喜の声をあげた。 彗星さま、彗星さま。彗星さまが落ちた。 村の若者が、娘の生首を頭上に掲げる。 落ちる落ちる、ほうき星。落ちる落ちる、娘のあたま。 村の子どもたちが、きゃらきゃらと声をあわせて歌う。 掲げられた娘の首は、満足げに笑っていたという。 終
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!