少年が青年と二人暮らしを始めるお話

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------------- 素肌に、大きさの合わないぶかぶかのシャツだけを羽織った姿で、少年はベッドの上にぺたりと座っていた。 シャツのボタンは一つもかかっていない。 目の前には黒い髪の青年が、少年へ向き合うように膝立ちしている。 昼間、明るい日差しに満たされていた、薄いカーテンの寝室は、そのまま一日中続いた雲ひとつない晴天のため、今は静かな月の光に満たされている。 銀色の月光を背から浴びる少年。 淡い金の髪が、男の大きな手にゆっくり撫でられて、その指の隙間から柔らかく零れ、月光を反射させて煌めいた。 「……怖くないか?」 少年と同じ目線になるよう、少し窮屈そうにかがんだ男が問いかける。 色素の薄い淡い金の瞳を、真っ直ぐ覗き込む漆黒の双眸。 昼間、恥ずかしすぎて合わせる事の出来なかった視線から、今、少年は、どうしても目を逸らせずに居た。 「は、はい……」 小さな声が、その言葉の意味すら理解できないままに返される。 (ガドさんは、僕に何をするつもりなんだろう……) ぼんやりした頭で考える。 目の前の男が、これから自分に対して何かするつもりである事だけは理解しつつも、少年に、それ以上の予想はできなかった。 ただ、自分の事を真っ直ぐ捉えてくる熱い視線に晒されていると、そんな事の全てがどうでもよくなってしまうくらい、頭が思考を停止しようとする事だけは分かる。 誘われるまま男とお風呂に入った少年は、男の手によってその体の内側まで綺麗にされていた。 「いいか? 嫌だと思ったら、いつでも言うんだぞ」 心配そうに告げる男の声が、あまりに優しく耳に響いて、少年は小さく身を震わせると、視線で頷いた。 頭を撫でていた男の手が、するりと下りてくる。 一瞬後には、少年は男の膝の上にひょいと抱え上げられていた。 「わ」 少年の反応に、男は苦笑しながら 「お前、本当に軽いな」 と呟いて、その唇を少年の首筋にそっと落とした。 小さな体が一瞬ぴくりと揺れて、全身に力が入る。 その緊張をなだめる様に、男は優しく舌を這わせた。 「……っ」 腕の中にすっぽり納まる少年の体が、みるみる熱を帯びてくるのを感じて、期待より不安が大きかった男の胸が高鳴る。 まだ筋肉も脂肪もついていないまっさらな少年の体。 男が夢中でその薄い皮膚を舌先で愛撫していると、後頭部と背中を男の両手に支えられるような姿勢で、されるがままだった少年が、両腕を黒髪にそうっと回してきた。 その仕草がたまらなく嬉しくて、胸が熱くなる。 男の頭を抱えれば、それだけでいっぱいになってしまう小さな体を、男は心から愛しく感じていた。 黒髪に顔を寄せる少年の口から零れる息が酷く荒い。 ゆっくりと顔を離せば、少年は潤んだ瞳と上気した頬で、自らの体から離れる男の頭に切なげに縋りついてきた。 「ガドさん……」 男の理性が大きく揺らぐ。 ぐいと少年の体を横向きに抱くと、赤毛の青年に分けてもらった液体を右手に取り 「ちょっとぬるっとするからな」 と宣言して、答えを待たず背中側から少年の後ろへあてがう。 「ん……っ」 ビクリと驚きに揺れる小さな体。 常温で保管されていた液体は冷たくなく、どころか擦れば熱く感じた。 (へぇ、こういう物なのか) 男ははじめて手にしたその感触に感心しつつ、少年の小さな窪みに意識を集中させる。 なるべく傷つけないように、優しく撫で回すと、膝の上で男の左腕に縋りつくように身を縮めていた少年から、少しずつ力が抜けてゆく。 体の左側面が男の胸にあたるような形で抱かれている少年が、その体重を完全に男の胸に預けると、男は精一杯優しい声で最後の心添えをした。 「痛いときは遠慮なく言えよ」 それを合図に、今までゆるゆると入り口を撫でていた男の指が、少年の体内へと侵入を開始する。 「ぅあ……っ」 途端、少年の体がまた硬直する。 「痛いか?」 体を縮こまらせる少年から、少しでも力を抜かせようと、震える小さな肩に口付ける。 指の動きを止めると、慌てたように少年が答えた。 「だい……じょう……っっ――んんっ」 その言葉にさらに指を沈めると、少年が悲鳴のような声を上げた。 小さな手が必死に縋り付いてくる腕に、ぽたぽたと温かい水滴がかかる。 (泣いてるのか……?) 急激に、罪悪感と焦燥感に駆られる。 「顔を上げてくれ」 切羽詰った男の声に、少年が顔を上げる。 涙に濡れる赤い頬。 苦しげに息を吸う半開きの唇を、男は思わず唇で塞いだ。 「んっ」 一瞬目を見開いて、さらに硬直する少年だったが、男の舌が口内に割り入ると次第にとろんとした表情に変わってゆく。 長い長い口付けの後に男がようやく唇を離すと、少年は体中から力が抜けてしまったかのようにくたりと男の胸に寄りかかった。 その小さな体を向かい合うように抱き直してから、動きを止めていた指をそろりと動かすと、それはまるで引き込まれるようにスムーズに少年の中へと入り込む。 「ぅ……ん……」 まだ全て埋まりきらない指の先が、柔かい壁にあたった瞬間、少年がびくりと背を反らした。 「あっ」 (思ったより浅いな……) 男は一抹の不安を感じつつも指先で内壁をそうっと擦る。 まだ未発達な体のためか少年の締め付ける力はそう強くなく、指は自由に動かす事ができたものの逆にどの程度なら動かしても良いものかがよくわからない。 「んんっ……」 ゆるゆると、少年の反応を見ながらその体内を探っていると、徐々に痛みを堪えるような声が甘い響きの音へと変わってゆく。 「あ……っあ、ん……」 元から高い子供声がさらに鼻にかかって、男の耳をくすぐる。 男の指先に、それまで触れられなかった弾力のある感触が、内壁の向こうにわずかに当たるようになった頃。時折聞こえていた嬌声は、途絶えることなく部屋に響いていた。 「あっ……んっ……はぁっ……が、ガドさ、ん……っ」 ひっきりなしに襲いくる熱に犯されながら、うわ言のように男の名を呼びその頬に手を伸ばす少年。 力の入らないその体をもう片方の腕で支えているため、男は切なげに伸ばされた小さな手へ、口付けをして応える。 感情が昂りすぎているのか、ぽろぽろと涙を溢れさせ続ける少年が、自分の手に寄せられた唇を見て嬉しそうに微笑んだ。 (そうか、こいつが気持ちの上で泣けないって言うなら、こうやって、泣かせてやればよかったのか……) ぼんやりそんな事を考えながら、男がゆっくりその指を抜き取ると、少年が不安そうに頭上の顔を見上げた。 「僕……僕……っっ」 何を言えばいいのか考えきれないままに言葉を発する少年を、男は片腕でベッドに横たえると、その髪を優しく撫でてる。 「大丈夫だ、お前の傍から離れたりしない」 男の言葉に、少年がやっと安心したように表情を緩める。 少年は自分が一体何をされているのか、まだ理解ができなかったが、この優しい黒髪の男になら、何をされても良いと思っていた。
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