少年が青年と二人暮らしを始めるお話

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「おわぁっ!!!」 僕は、頭上から響いたガドさんの悲鳴で目を覚ました。 「う……?」 微かに身じろぎをしてから、声のした方向……つまり上を見上げてみる。 ベッドの頭側にある窓から差し込む日差しがちらちらと眩しい。 今何時くらいなのかな……。 こんなにぐっすり眠ったのは、本当に久しぶりだった。 「お……お前……」 僕を見ながら、おかしな表情で固まったままのガドさん。 なぜか必死で両手を持ち上げている様が、まるで拳銃でも向けられた人みたいだ。 「どうかし……」 「お前、一体……」 僕とガドさんの言葉が重なる。 「い、いや、お前じゃないよな、俺が抱き込んでたもんな。ってことは、俺が引き込んだのか!!」 ガドさんが頭を抱えて悲痛な叫びを上げる。 「だ、大丈夫か? 潰されたりしなかったか?」 おろおろと僕を覗き込むその瞳が、本当に心配そうで、いつも落ち着いているガドさんに、その慌てた姿がどうにも似合わなくて、僕はなんだかおかしくなってしまった。 「ちょっと苦しかったりしたけど、大丈夫ですよ」 口の端ににじみそうになる笑いを、必死で堪えつつ答える。 僕の答えに、ガドさんがさらに青ざめつつ 「どっか痛いとこは無いか……?」 と、僕の体を酷く真剣な表情で見回す。 真っ直ぐな視線を受けて、なんだか急に恥ずかしくなってしまった僕は、目を逸らそうと、慌てて俯いた。 顔がみるみる赤くなるのが自分でも分かる。 けど、それがどうしてかは分からない。 とにかく、真剣に僕を心配してくれるガドさんに 真面目に答えを返さなきゃと思って、自分の体に痛むところが無いか、全身に意識を配ってみる。 「ええと……お尻……と……腰が、その……ちょっと、痛い、です」 思いがけずたどたどしくなってしまった返事が恥ずかしくて、頬の赤みが耳まで広がる感触に、思わず手で顔を覆ってしまう。 抱き寄せられて、ちょっと反り返るような姿勢で寝ていたのがいけないのか、それとも、寝なれないふかふかのベッドで、長時間寝返りも打たずに横たわっていたのが原因か。 あ、背中も痛いみたいだ……けど、今から追加するのもおかしいかな……。 そこまで痛いわけでもないし……。 「――え……」 ガドさんの、妙に掠れて乾ききった声が聞こえた。 予想外の反応が気になって、僕は指の隙間からそうっとガドさんの顔を伺い見る。 そこには、精悍な顔立ちを困惑しきった表情で染めているガドさんがいた。 「俺……が……? いや、まさか……そんなわけ……」 なにやらぶつぶつと、うわ言のように呟くガドさん。 な……何かまずかったのかな? とにかくフォローしなきゃ……。 不意にこみ上げてきたあくびを噛み潰して、ガドさんを見上げる。 まだ頬は熱かったけれど、顔を伏せたままでは言い訳にもならない気がする。 「あの……でも……大丈夫だよ、ガドさん優しくしてくれたから……」 昨夜、僕を優しく包んでくれていた腕の温かさを思い浮かべる。 それは確かに、無意識でも、僕を潰さないようにと、そうっと抱きしめてくれていた。 あくびの涙か、昨夜の名残か、ふいに涙で視界が滲む。 こぼれる前に慌てて指で掬おうとして、僕は、昨夜自分の頬に触れたガドさんの唇を思い出していた。
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