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「せっかくの夏休みなのに大学で何やってんだよ」
「デート」
「なんで!わざわざ、休みの奴が大学でデートすんだよ!!」
「あれ?和泉は追試中だっけ?」
「ああ、そーだよ!評価AAAの嫌味かっ!?」
和泉くんの叫びがカフェテラスに響いた。
彼は卒業試験に落ちて1回目の追試中らしく、追試が延びれば延びるほど夏休みが無くなっていくらしい。
1回で全部合格なんて、春多くんって結構頭良かったりするのかな?
「卒業試験って大変なの?」
「この後、大学卒業して国試が待ってるだろ?卒業試験では医師として働けるかも評価されんだよ」
「そっか、大学卒業すればみんなお医者さんになれるわけじゃないんだ……」
「春多の彼女さん、それキッつい……」
「えっ、あ、ごめん!」
和泉くんの顔が青ざめて泣きそうになってるから、慌てて謝ると、逆に和泉くんの方が申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「いや、こっちこそ。この間、余計なこと言ってすみませんでした」
「そ、う、だ、よ!お前婚約者がいるとか勝手なこと言って、珠里さんのこと不安にさせやがって!」
「全然大丈夫だよー、解決したしね?話し合うきっかけになったし」
不機嫌になった春多くんの服の裾を引っ張って目を細めれば──、
「まぁ、俺の珠里さんがそう言うなら。……」
すぐに機嫌はなおって、甘えるように肩に頭を乗せ、チュッと軽いキスが落ちてきた。
「もうなんなのお前ら…目の毒なんだけど」
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