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「えっ!?春多くん、車持ってたの?」
「いや、親……宗一郎さんの借りた」
そっか、院長先生のか。
マンションのエントランスで待っててって言うから、何だろうと思ってたら黒のコンパクトカータイプの乗用車に乗って現れるから驚いた。
「あいつ、3台持ってるから。時々、借りてる」
「ふーん」
「早く乗って」
「あ、うん」
慌てて助手席に乗り込んで、シートベルトをしめる。
春多くんと院長先生って、一緒に話してるの1回しか見たことないけど。
あの時はちょっと怒ってたけど、仲は悪くないんだよね?
ていうか、車3台って持ち過ぎじゃない?私、1台も持ってないのに。
唇を尖らせて、運転する春多くんに目を向けたのに、ハンドル操作する仕草が格好よくて見とれてしまった。
「ねぇ、どこ行くの?」
「何処だと思う?」
「えっ!もしかしてサプライズで豪華ディナーの後に高級ホテル予約してくれたとか!?」
「ふはっ、凄っげー発想。それもいいな」
「えー、違うの?」
「残念。でも、あんたが行きたがってた所だよ」
眉を下げて悲しそうに目を細めるから、すぐに気が付いた。
きっと、今から、春多くんのお母さんの所に行くんだ──。
かなり浮かれてしまった自分が恥ずかしくなった。
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