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ハヤシライスを口に運ぶと、酸っぱい味がした。玉ねぎはとろとろに煮込まれてより甘さを蓄えると、ルーの塩気と口の中で混ざり合い、最高のハーモニーを作る。ハヤシライスとビーフシチューを一緒くたに考える人が、未だに信じられない。ハヤシライスは夏の匂い、ビーフシチューは冬の匂いがする。トマト缶をベースにして、ケチャップとソースで味を整えれば、ハヤシライスにしかないコクが出てくる。それもこれも、全部、おばあちゃんが教えてくれた。どこまでも掃除の行き届いた、清潔なキッチン。日が長くなり始めると、決まって、サフランが置かれた。小窓の日が来ない、調味料ケースの中だ。食器棚よりも高いところにあって、いつも手が届かなくてもどかしかった。あの頃は、よく料理の手伝いをしていた。卵を混ぜるにしてもシンクまではねかして、後片付けを増やしたり、砂糖と塩を間違えないように赤と青にしていたのに逆に持ってきたりして、とんでもない味にしたって、祖母は笑って、頭を撫でてくれた。そんな、些細な愛された記憶の断片が、時に心を救う。
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