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突然の質問に卵焼きを落としかけた。桜花ちゃんを見れば真剣な瞳をしている。恵理ちゃんは珍しく桜花ちゃんの口からほかの人の名前が出たことに驚いている。
「香月君って、よく講議中寝ている香月君、であってる?」
恵理ちゃんが桜花ちゃんに聞けばコクリと頷く。
「ん。この前の月曜日、忘れ物したの。その時にここと香月新が一緒に帰ってるの見てさ。なんか楽しそうに話してるの見て、なんか、不安になっちゃって。なんで香月新と話してたの?」
「なんでって、香月君とは、友達、だから……」
「いつの間に香月君と心音仲良くなったの!?」
「二年生になってすぐ、かな」
恵理ちゃんから次々とくる質問を答えていると桜花ちゃんはまだ不安は拭えないような表情をしながら「そっか」と呟いた。
「遠目から見ても仲良さそうだったから。なんか二人、お似合いというか、付き合ってるのかと思った」
そう言ってる桜花ちゃんはどこか無理をしているように見えた。人には言えないことで何か悩んでいると彼女は決まって「そっか」と言う。そのことが気がかりだったけれど彼女に何を不安にさせたのだろう。残ったお弁当を食べながら頭の片隅で考えてしまう。
「次、西館だよね。お昼食べ終わったら移動しよっか」
恵理ちゃんの言葉に賛成し、お昼を食べ終わったら食堂を出て西館に向かった。西館に入ってすぐの所に友人と話している香月君がいた。友人と話しているせいか挨拶をするのも躊躇い、彼の近くをそのまま通り過ぎようとした。
「あ、柴崎さん!」
呼ばれた方を振り向けば香月君が小走りでやって来た。何か落とし物でもしただろうか、と頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
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