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「これ、俺が好きな作家さんの新刊なんだけどよかったら読んで」
私に差し出された一冊の小説。その本は何となく気になっていた作家さんだった。今回珍しくファンタジー小説を書いたので買おうか迷っていたところだった。
「え、いいの?」
「俺はもう読んだし、いいよ。本当は必修の講議で渡そうかと思ったんだけど、タイミングのがしちゃって。本、返すのはいつでもいいから」
「わかった。ありがとう」
「今日話せてよかった。あ、次講議だよね?頑張ってね」
香月君は「じゃあね」と手を振り、友人の元に戻って行く。私たちのやり取りを見て恵理ちゃんは苦笑していた。
「桜花が付き合ってるのかと思うのわかったかも」
「そう?普通に話してただけなのに?」
「香月君が女子と話してるの初めて見た。男子の友達と話してきてるときと心音と話してる時、全く表情違った。男子の前では普通なんだろうけど、心音の前だと凄い優しい顔してた。気が付いてないだろうけど、心音もね」
くしゃくしゃっと私の頭を撫でる恵理ちゃん。恵理ちゃんは私より少し身長が高く私が少し見上げるようになる。チラリと恵理ちゃんを見ればどこか辛そうな目をしていて。恵理ちゃんも心音ちゃんと同様何かに悩んでいるのだろう。そのことに触れないまま講議を受けに向かった。
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