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このやりとりを同級生が何人も見ていた。一年の時に話していなかった二人が学年が上がり親しく話しているのが珍しく見えるのだろう。
「ねぇねぇ、柴崎さんって香月君とどんな関係なの?」
「香月君と付き合っているの?」
「なんか意外な二人がくっついたよね」
と、毎回似たような質問を講議を受ける前後に複数名の生徒に席を囲まれるようになった。
質問には曖昧に受け答えしていた。人に囲まれることは全く無くて囲まれることに恐怖を覚えた。しかし、人の噂も七十五日というだろう。あまりいい答え、反応が無かったのか席を囲むことはすぐに無くなった。
「香月君の所にも質問しに行った子たちいたよね……。疲れなかった?」
「疲れた。ずーっと「柴崎さんとどういう関係」って言ってくるんだもん。ただの友達って答えても「そんなわけあるか」って言われるんだ」
ただの友達、なのにその言葉を信じない根拠がわからない。男女間の友情はあまり信じていないのかもしれな。或いは異性の友達の友達がいないのかはわからない。でも、私は……。
「男女間の友情、友達はあると思うけどなぁ……」
何気ない、言葉だった。ポツリと呟いたからきっと彼の耳には届いていないと勝手に思っていた。けれどその言葉を彼は拾ってくれた。
「俺もそう思う。でも、わかんないんだよね。友達から恋人に変わるの」
「わかる、かも。友達を異性として見るの難しい、気がする。幼馴染とか長い期間一緒にいる友達なら尚更。でも私人を好きになることも誰かと付き合うことも無かったからそういう話聞くと羨ましいというか、いいなって思うよ」
「だね。なんかこうやって思ったことストレートに話して、共感してもらえるの柴崎さんだけかも。あの日声かけて良かった」
こんな何気ないことも話せる友達が出来たのは初めてだ。あまり話すことが得意としない私でも、話すことが楽しいと感じるのはいつぶりだろう。独り言として済ませようと放った言葉を拾ってくれた。そんな些細な事が嬉しくて、頬が緩む。
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