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春は出会いの季節だと誰かが言っていた。そんなもの私には関係ないと思っていた。
四月四日の今日は大学の登校日。今日は講議が無く、履修登録と学年集会だけだったのだが、二年に上がったということで学年集会が長引いて午前中いっぱい使っていた。
大学で一年の時に出会って仲良くなった友達二人とお昼を食べて、大学の最寄り駅まで一緒に向かっていった。駅まで一緒に行っても二人とは変える電車は違うため、駅のホームでは一人で電車を待っている。ホームには私と同じように次の電車を待っている大学生がちらほらといる。
「次の電車は、14時2分か。あと三十分も待つのか」
はぁ、とため息がこぼれる。でもまだ今日は良い方だ。だって悪いときは目の前で電車が走り去ってしまうのだから。私が使っている電車は朝と夕方に本数が比較的多く、お昼の時間帯は一時間に一本、決定的なのは車両が普通の電車より短く、電車の線路が一本しかないということ。朝と夕方の通学時間はぎゅうぎゅう詰めで汗かくし、暖房冷房が両極端。嫌なことを上げてしまえばきりがない電車でも、ここを走っている時は長いため他の地域からやって来た電車好きの人をよく見かける。他の人に愛されるとはもういう嫌なところがこの電車の味になっているのだろう。
「なんかホームの椅子に座るのもなんかあれだし、立ちながら本でも読もうかな」
肩にかけていたトートバッグから、一年の最後のとある講議に配られた文集を取り出し、読み始めようとしていたところに後ろから声をかけられた。
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