4,近づく距離

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「ごめん柴崎さん、課題教えてー」 「えっ……?」 電話をかけてきた相手は香月君だった。突然の電話に驚いてスマホを落としかけた。 「えっと、課題?どの教科?」 「全般的に分からないんだけど、とりあえずやばそうなのが漢文かなー。あとは何とかなるかもしれないし、ならないかもしれない」 「漢文今やってるから、わかる範囲でなら教えるよ」 「めちゃくちゃ助かる!ありがとう、柴崎さん」 香月君の声を聞いただけで想像してしまう。きっと今彼はほっとしたような表情をして頬が緩んでいるのだろう、と。 スマホにイヤホンを指し通話をしながら課題に取り組んだ。大体の問題は教科書や参考書のページを教えて問題がわかるものだった。 分からない問題の説明は声だけでは説明しずらくて途中、ビデオ通話にして図に書いて教えた。 「あー、だからこれ二回読むから再読文字って言うのか。納得したわ」 「納得できたのは良かった〜。何となく思ったんだけど、どうして私連絡してきたの?」 「あー、いつもいるメンバーに連絡したんだけなんか課題のこと教えるの面倒なのかみんなから後でって言われてさ。それで最後の頼みで柴崎さんに連絡入れた」 「そうだったんだ」 ふと気になっていたことを聞けば彼も私と似たような状況だったらしい。突然の連絡には驚いたが助けを求めた人を問答無用で助けないなんてことはしない。多分私は今日みたいな出来事は誰にでも救いの手を出すのだろうと、頭の片隅で思っていた。 漢文の問題がほぼ解き終わったころに張り詰めていた雰囲気が無くなったせいたのか、気の抜けたぐぅという音が入る。時計を見ればお昼すぎ。 「やべ、お腹鳴ったかも。柴崎さん、また課題教えてよ」 「いいよ。一休みしてからにしよっか」 そう言って通話を切り、午後も通話しながら課題を取り組むことを決めた。何時からなんて決まっていなくても大丈夫、またすぐに声を聞けると不思議と思った。
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