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「あの、柴崎さん、だよね?創作の講議を受けてた香月なんだけど、わかるかな……?」
振り返るとそこには確かに同じ講議を受けていた香月新君が立っていた。去年は彼と話したことは一度も無い。ただ、講議内によく寝ていることは何度も見かけている。それに普段絡んでいるのは男子だけ、いつも一緒にいる人以外と会話をしているのはパッと思い出してもない。私、途中で何か落とし物でもして彼が届けてくれたのだろうかと首をかしげる。
「は、はい。わかり、ます」
でも声をかけてくれた理由はわかりませんと心の中で問いかける。初めて彼と話すからなのか、緊張のせい、それとも人見知りのせいなのかはわからないけれど同級生に敬語で話してしまう。これまで彼と話したことは先ほども言ったように一度も無い。だから今、彼が私に話しかけてきたのが不思議でしかない。頭の上にはてなマークをいくつか浮かべている私に彼は言ったのだ。
ここで冒頭に戻るわけなのだが、正直なんで私なのだろう。同じ創作の講議を取っている子はいるわけで、その中で私を選んだ意味がわからなかった。私の作品なんていいものかどうかわからないのに。どうして、私なんだろう。
「友達、ですか?」
彼の口から出た言葉を繰り返す。
「うん。小説を書く仲間、というか気楽に話せる友達が欲しくてさ。いつもいるメンバーはさ、小説書かなくて」
話している彼の表情は少し困ったような、寂しさを隠しているように感じた。
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