1、友達になりませんか

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 彼の瞳が小さく揺れていたような気がしたのは気のせいだろうか。それに彼が言った“気楽に話せる友達”という言葉は私も思い当たるところがあった。私の友達も小説は書くタイプではなく、読むタイプ。もし、周りに同じ小説を書く人がいたらお互いにいい刺激になるのではないのかと思ったことは正直なところ何度かある。 「その気持ち、わかります。私の友達は、小説は書かないけれど書いた作品を細かい描写まで読んで感想言ってくれるのは正直言って嬉しい、です。でも、やっぱり同じ、小説を書く側で、話し合える友達が欲しいって思うの、わかる、ます」  最初は自信が無くて、下を見ていた。けれど、多分私に声をかけた理由はわからないけれど同じ小説を書くという共通点がある友達が欲しい気持ちは同じだと思うと自然と彼の顔を見ていた。自信が無くてうつむいてしまうのは私の悪い癖で情けないな、なんて心の隅っこで思ってしまう。  彼の反応が全くない。一人勝手に熱く語ってしまったかもと後悔し始めた時、彼は嬉しそうに笑って言った。 「ほんっとそれ!柴崎さんの言った通りなんだ。だから、俺と友達になってください」  春の暖かい日の光を浴びているせいなのか、それとも彼自身が太陽みたいに明るい人だからだろうか。彼の笑顔が眩しい。  私が言った言葉を否定せず、肯定してくれたことと、同じ所説を書くという共通点を持つ友達ができることが嬉しい。胸がじわじわと熱くなるのを感じながら笑顔で「こちらこそ」と言えた。
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